北陸道死亡事故「あおり行為」危険運転致死罪で男を在宅起訴

おととし、石川県白山市の北陸自動車道で、三輪自動車が車線変更してきた乗用車をよけようとして転倒し、運転していた76歳の男性が死亡した事故について、金沢地方検察庁は乗用車を運転していた43歳の男の意図的な幅寄せによる「あおり行為」があったとして危険運転致死の罪で在宅起訴しました。

当初、警察は男の過失による死亡事故として書類送検しましたが、検察がその後1年半近くに及ぶ捜査で「あおり行為」を認定する異例の判断となりました。

おととし5月26日、石川県白山市の北陸自動車道で、福井県方面に向かっていた三輪自動車が右の追い越し車線から車線変更してきた乗用車をよけようとしてバランスを崩して転倒し、運転していた76歳の男性が死亡しました。

警察の調べに対し乗用車を運転していた富山県の会社員、本松宏一被告(43)は「三輪自動車には気付かなかった」などと話し、警察も「意図的な運転だったとまでは裏付けられなかった」として4か月後、過失運転致死の疑いで書類送検していました。

しかし、その後、遺族側の要望を受けて金沢地方検察庁が捜査した結果、意図的な幅寄せによる「あおり行為」があったとして、過失運転致死ではなくより重い刑罰を科すことができる危険運転致死の罪で本松被告を在宅起訴しました。

この事故をめぐって起こされた民事裁判では、原因については故意か過失かは特定しないまま、本松被告が解決金を支払うことによる和解を遺族が受け入れているということです。

一方、検察は改めて現場検証を行いドライブレコーダーを解析した結果、2台の車の位置関係などから、本松被告が三輪自動車が見えていたのにハンドルを切ったと判断し、立件に踏み切ったとみられます。

あおり運転が社会問題となる中、当初、過失によるとされた交通事故について検察が1年半近くに及ぶ捜査で「あおり行為」を認定する異例の判断となりました。

ドライブレコーダー映像もとに再現した状況

 
亡くなった男性は三輪自動車で大阪に戻る途中で、ツーリング仲間の女性の大型バイクと2台前後に連なって北陸自動車道を走っていました。

後ろを走っていたバイクの女性はヘルメットにドライブレコーダーを取り付けていて、その映像には事故が起きるまでの状況が克明に記録されています。
去年11月、大阪地方裁判所に男性の遺族が本松被告に損害賠償を求めて起こしていた民事裁判の法廷でドライブレコーダーの映像が再生されました。

その映像をもとに再現した当時の状況です。
本松被告の白い乗用車は当初、走行車線を走っていました。そこに追い越し車線から来た男性の三輪自動車が後ろから追い抜こうとするとスピードを上げ、しばらくの間、併走しま・・・・
・・・北陸道死亡事故「あおり行為」危険運転致死罪で男を在宅起訴 | NHKニュース
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・・・その後、被告の車が女性の前に割り込むように車線変更したうえ急ブレーキをかけたことについて「私もぶつからないようにエンジンブレーキとフットブレーキをかけた。速度が100キロほどから40キロぐらいまで落ちて、タイヤにロックがかかると思い、怖かった」と述べました。

その後、先を走る男性にインカムを使って「進路を妨害されている」と連絡を取ると、男性は「左に寄るので追いつくのを待っている」と答えたということです。

そして、その直後の状況について「男性が車線変更すると、被告の車はスピードを上げて三輪自動車を追いかけ、幅寄せされた男性はガードレールに激突した。被告の車は逃げていった」と涙ながらに証言しました。

民事裁判では遺族と和解も

亡くなった男性の遺族は、おととし11月、本松宏一被告と同乗していた妻に対して、8600万円余りの損害賠償を求める民事裁判を、大阪地方裁判所に起こしました。

裁判で、遺族側が「被告は意図的に危険な幅寄せをした」と主張したのに対し、被告側は故意を否定し、訴えを退けるよう求めました。

遺族側の弁護士によりますと、去年11月に本松被告本人などの証人尋問が行われたあと裁判所から和解の勧告があったということです。

そして和解協議の中で本松被告が三輪自動車に非常に近い状態で車線変更したことが男性が亡くなる原因となったことまでは認めたため、遺族は先月下旬、故意か過失かは特定しないまま解決金の支払いによる和解を受け入れたということです。
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